仙台牛のプロフェッショナルたちVol.2~栗原市 那須さん親子~
消費者の立場に立ったときに最優秀牛を育てた生産者はどのような人なんだろう?どのような環境で育てているのだろう?といった疑問や関心にこたえようというコーナーです。
今回は、那須さんの牛舎を訪問させていただきました。那須さんは、宮城県栗原市の志波姫というところで牛を育てていらっしゃいます。お父さんと家族で育てています。
1.ここに来て最初に感じた感想ですが、牛がたくさんいて、のびのびと育っている感じを受けました。牛を育てている際に工夫されている点や、ストレスなく育てている点はありますか?
ストレスなく育てるために、まず牛舎の清掃をこまめにしっかりしています。また、扇風機を回して換気をよくしています。
2.繁殖農家と肥育農家がありますが、那須さんのところは肥育農家ということで、肥育農家を始めて、何年ぐらい経ちますか?
私は、今年で 10 年目になります。
3.今ここで育てている牛は何頭ぐらいになるのですか?
現在主要頭数は、60頭ほどになります。
4.60頭というのは多いのですか?少ないのですか?
中間ぐらいだと思います。宮城県にしては少ない方かもしれません。
5.手塩にかけて育てた60頭のうち、出荷される牛は何頭ぐらいが A5(最高等級)になるのでしょうか?
うちでは、4割から5割ほどが A5 になります。
6.全国の A5 比率の平均割合が2割と言われていますので、比べると倍以上も多くなっていますが、子牛を繁殖農家から買うときに、気を使っているところはありますか?
まずは、病気をしていない牛を買うこと、発育が極端に悪くない牛を買うこと、後は、血統構成がしっかり揃っている牛を買っています。
7.育てている牛は雄(オス)牛(去勢牛)と、雌(メス)牛の両方を育てていますか?それとも雌(メス)牛だけを育てていますか?
ほぼほぼ9割以上が雌(メス)牛を育てています。
8.雌牛の方が消費者から美味しいと言われていたり、また融点が低いと言われていますが、生産者から見て雌(メス)牛を育てるメリットというのはあるのでしょうか?
管理をしやすいのが一番ですし、質がいい、サシ(霜降り)が入りやすいという特徴があります。また、我々の飼養管理に合っているというのがあります。
9.出荷されるときには、成体でだいたい何キロぐらいになるのでしょうか?
成体で、600キロから700キロぐらいになります。
10.子牛の時には何キロぐらいなのでしょうか?
子牛は導入時、230キロから270キロぐらいになります。
11.子牛のときから出荷されるまでの期間、何ヶ月ぐらい育てているのでしょうか?
およそ20ヶ月ぐらいになります。
12.そうすると約2年ほど育てているということですね。600キロから700キロぐらいの成体のものは、枝肉にすると、何キロぐらいになりますか?
370,380キロぐらいから420キロぐらいになります。
13.今回、那須さんのところでは 2014 年 11 月に仙台牛の最優秀牛という名誉な牛を育てられたわけですが、最優秀牛の牛とそうでない牛とで育てているときに何か違いはあるのでしょうか?
管理には全く違いがないようにしています。牛舎によって複数頭で育てる場合と、一頭ずつ育てる場合には、個体管理に若干の違いはあります。出荷時に発育をみてよいなと思う牛は、やはりよい場合が多い気がします。逆に、よくないなと思う場合には、それなりのものが多い気がします。
14.これまで 10 年間育ててきて、苦労したことや難しかったことはなんでしょうか?
はじめたときは去勢牛が多く、何年かしてから雌(メス)牛が多くなりました。雌(メス)の管理をしっかり覚えるまでは大変でした。また、子牛の相場が変わるのは生産者としても難しい問題です。
15.子牛の相場というのは、すごく変動しますか?
今は、子牛の頭数が圧倒的に少ないので、素牛の価格が上がってきて、買い付けが大変です。
16.買い付けの価格と、せりで落札された価格とで合わなかった時はありますか?
ありますね。はい、それは、毎回ありますね。
17.逆に、思ったよりも高く売れた場合はありますか?
ありますね。大会があるときは、値段が出やすく(高く)なります。
18.那須さんの考える仙台牛の魅力はどういったものになりますか?
一番は、A5/B5 でしか評価されないというところです。
19.A5/B5 ランクという最高格付けされた牛を育てているのが誇りになっているのでしょうか?
宮城で牛を育てている生産者は A5・B5 の仙台牛を目指して作っているのではないかと思います。
20.那須さんは、畜産をやろうと思ったきっかけはあったのでしょうか?
実際には、小学校くらいから牛にえさを与えたりしていました。学校を卒業してから、1 度社会に出て、10 年前に父が以前よりおこなっていた牛飼いになろうと思いました。牛の数は、私が帰ってきたときから、今も変わっていないですね。
21.そうするとお父様は、何年ぐらい前から牛を育てているのでしょうか?
私が生まれる前や記憶があるうちからやっていますから、かれこれ長い間やっていますね。
22.40 年以上やっているかもしれないですね?
そうですね。やっているかもしれないですね。
23.それはすごい、牛のプロフェッショナルですね。牛の肥育で、出荷したときに高く売れる場合はもちろん嬉しいことだと思いますが、育てている中で嬉しかったことや醍醐味はありますか?
一番は、牛を飼養管理している上では、発育がよかったときです。自分の買い付けのときに見立て(予想)が間違っていなかったときには、よかったな、嬉しいなと思います。
24.実際に消費者の方に食べていただいて、美味しかったという声が、生産者のところに届くのが難しいと思うので、我々は消費者の声を生産者の方もできるだけ聞けるような形で取り組んでいきたいと思っていますが、実際に消費者の声をきくことはありますか?
たまに地元(栗原)で肉を食べる機会がありますが、おいしかったよという声をたまにきくことはありますが、いつも同じメンバーだったりします(笑)
25.那須さんは、成牛を出荷する際には、どういった出荷先になりますか?
基本は、仙台(仙台卸売市場)、東京(芝浦卸売市場)になります。
26.仙台に出す場合と、東京に出す場合で、何か大きな違いはあるのでしょうか?
現状は、大きな違いは無いです。以前は、東京がメインで、仙台の方は何らかの大会がある場合に出していたという形でした。
27.牛を育てるにあたって、食べさせている材料というのはどういったものになりますか?
水、わら、配合飼料になります。
28.水というのも恵まれた自然の中で、美味しい水になるのですか?
うちは、井戸水を使っています。
29.稲わらというのはどういったものになりますか?
基本的に自分のうちの田んぼからとるひとめぼれの稲わらを使っています。
30.そうすると自給自足で行っているのですか?
そうですね。
31.皆さんそういう自給自足が多いのでしょうか?
宮城とかこのあたりの地域だと稲作地帯のため、自給自足の生産者が多いと思いますが、他の地域だと稲わらとかは、買っている場合も多いと思います。
32.那須さん、今日はありがとうございます。最後によろしければ消費者の方に何か伝えることがありましたら、お願いします。
仙台牛は私たちが丹精こめて作った牛です。仙台牛を皆さんにもっと美味しく食べていただけたらと思いますので、是非ともいっぱい食べてほしいと思います。